暗黒王子と危ない夜

あたし今、何を言おうとしていた?


雨の日の校舎で、本多くんとふたりきり、キスされたこと……。

あれは本当に現実だったのか、自分の記憶を疑いたくなるけれど、唇の熱は今でもずっと残ったまま。


本多くんに手を引かれるまま、力が抜けたみたいにその場に座り込んでしまって、温かい体温に包まれたこと。

頭がぼうっとして、うまく思考が回らなかったこと。……しっかり覚えてる。



「ほ……本多くんは遊んでるって噂は、本当?」

「は?」

「女の子とたくさん付き合ったり……とか」



だんだん語尾が弱くなる。中島くんは「へぇ」と目を細めた。



「そっちでは、そんな噂まで立ってんだね」
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