暗黒王子と危ない夜
──インターホンが鳴ったのは、予定よりも少し早い7時45分。
ちょうどローファーを履いて玄関を出ようとしていた時だった。
なんの疑いもなくドアスコープから外を確かめないまま扉を開けた……のが、いけなかった。
目の前に立っていた人物に驚いて、目を見開く。
「あ、おはよう」
そう言ってぎこちなく手を上げたのは三成くん──では、なかった。
「本多くん……なんで、」
「あれ……もしかして聞いてなかった? 三成に伝えといてって頼んだつもりだったけど」
「へ? あっ……。迎えに来るっては聞いてたけど、本多くんだとは、思って、なくて、」
軽くパニックに陥る。
だって三成くんは、さも自分が迎えに来るかのような文面で送ってきたのに。
玄関を開けたら本多くんがいました、なんて誰が想像できただろう。
「行き道に何かあったら責任取れないし、一応ね」
「……」
「それに昨日のこととか。おれからも話しておきたいし」
落ち着いた声。柔らかい笑顔。
いつもの本多くん。
制服を身にまとった、学校で見かけるままの本多くんだ。