暗黒王子と危ない夜
右腕……?
どきりとした。
階段から落ちたときのことを思い出して心臓が早鐘を打つ。
「本多くん、骨、折れてるの?」
「多分な。珍しく隙でも突かれたか?」
「……違う、あたしのせい……」
「はあ?」
三成が眉を寄せてのぞき込んでくる。
「あたしが階段から落ちたのを、助けてくれて……」
「階段から? 一緒に落ちたのか」
「うん。庇ってくれたから、あたしはなんともなかった。でもやっぱり……本多くん怪我してたんだ……っ、どうしよう、」
なんて謝ったらいいんだろう。
ただでさえ迷惑をかけているのに、挙げ句の果て怪我まで負わせて。
「……あー、そういうことか。別にお前が気にすることじゃねえよ。助けたのは七瀬の意思だからな」
「でも!」
「そんな自分ばっか攻めんな。逆に考えてみろ、右腕一本だけの犠牲で済んだんだ。二人とも頭打って意識不明の重体〜だとか最悪の事態考えれば、ずいぶんと軽い話だろ」
三成の言うことは分からなくもない。
でも、あたしのせいで本多くんが怪我をしたことに変わりはないから……。