暗黒王子と危ない夜

やっぱり、全く別の世界に生きている人だ。


あたしだってお父さんと離れて暮らしているし、お母さんとも、ほとんど顔を合わせない生活を送っているけれど。

本多くんの気持ちは、きっと、今までのほほんと生きてきたあたしなんかが理解し得るものじゃない。


「可哀想」だとか、そんな簡単な言葉で受け止めることもできないほど重たくて、安易に同情することすら躊躇ってしまうような。



「あーほら。やっぱり暗い顔すんだよなお前は。せっかく笑ってたと思ったのに」

「だって……」

「俺が今言ったことは忘れろ。お前を悲しませたり悩ませたりすんのは本多も望んでねーよ」



そんな言葉と同時、みかんのイラストが付いた缶ジュースを差し出される。



「……ありがとう」

「果汁100パーセント粒入り。俺が定期購入してるやつ」


あたしを元気付けるように明るく笑ってくれる三成。

この優しさに救われたのは初めてじゃない。

ありがとうと、心の中でもう一度お礼を言って受け取った。

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