暗黒王子と危ない夜
──鈍い音がした。
呻き声、荒い吐息。
それらが絶え間なく響く。
やがて静かになったところで、恐る恐る男の姿を確認しようとすると、すぐに何かで視界を遮断された。
少し経ってから、あたしの目を覆っているのは本多くんの手のひらだと気づく。
「見なくていいよ」
耳元でやさしく響いた。
「目、閉じといて」
ふわりと、かすかに甘い香り。
あたしに寄り添うようにして、そばにいてくれるのがわかる。
「部活動生が流れてくる可能性あるから、一旦ここ離れようか」
冷たい手が、そっとあたしの腕を引いた。