暗黒王子と危ない夜
そういうわけじゃないと、慌てて首を横に振る。
「中島くんはここにいて……。そばにいてくれないと不安だから」
さっき目を覚ましたとき、誰もいなくてすごく心細かった。
「相沢さん、男に慣れてきたよな」
元いた位置に座り込みながら中島くんが言う。
「最初会ったときは、すげぇビクビクしてて、顔も真っ赤だし、目も合わせない感じだったのに」
「それは……」
今まで、異性と接したことがほとんどなくて、勝手に縮こまっていたから。
でも、本多くんを通して出会った中島くんも、三成も親しく接してくれたおかげで、いつのまにか平気になった。
……男の人が平気なった、というよりは。
中島くんだから、三成だから、平気。と言ったほうが正しいかもしれない。
「相沢さんは無意識に煽るタイプだなーたぶん」
「煽る?」
「そばにいてほしい、とか好きでもない男に言うもんじゃないぜ」
言われた言葉を受け止めて、考える。
「……うん。そうだね。気をつけるね」
女友達と同じ感覚で接したら、意味を勘違いされることもある。
今の相手が、中島くんだからよかったものの……と、恐らくそういうこと。
的確な言葉をくれるのはありがたい。
異性と接した経験が少ないあたしは、無意識にとった行動で痛い目をみるかもしれないから。
「俺、相沢さんのこと結構好きだよ。その真面目が入った素直さも。ちょっと天然だけど、それを武器にしてない、計算がない……純粋さ?」