暗黒王子と危ない夜
コンクリートで舗装された通路を誰ひとり話すことなく進んでいく。
まだ建物に入ってもいないのに、あらゆる箇所に監視カメラが設置されていて、その数の多さにぞっと寒気が走った。
入り口にカードがかざされ、扉が音もなく開く。
「……静かだな。まずは深川さんがどこにいるかだな。中島から連絡待つしかねぇか……」
「けどこの中に、本多七瀬もいるんすよね」
「だな。さてはもう始まってんのか? 端からからタイマン貼んのは、総長のやり方じゃねぇ気がするけど」
「指示が来るまで、俺たちは地下で待機しておくってのはどうです?」
あたしの右隣にいた人物が提案すると、無言で頷き、進み始めた方向に全員が続く。
しばらく歩き、エレベーターの手前まで来たときだった。
スマホのバイブ音が鳴り、画面をタップしようとした灰田くんが、ふと手を止めて。
それを耳に当てた、矢先に。
『お前ら全員、今すぐ外に出ろ!』
そのスマホから聞こえてきたのは、張り詰めた中島くんの声。
突然のことに、皆どうしていいかわからない様子で。
「中島、どういうことだ」
『話してる暇はない! 電気線は全部切られてる。エレベーターも動かねぇ。いいからそこを早く離れろ!』