暗黒王子と危ない夜
『その……ケイイチロウさん、がおっしゃる“目的”の意味が僕にはよくわからないんだけど、きみ自身の“願い”は目的にならない?』
『願い……』
『友達に幸せでいてほしい。そのために学校に行く。好きな人がいる。だから学校に行く』
『………』
『そういえば彼女とかいるの?相当モテるの知ってるよ』
『いません。気になる子ならいるけど、名前もわからなくて』
『えっそうなの!? ……あ、いやごめん大きい声を出して。あんまり興味ないのかなって思ってたからさ』
『初めて見たのは、入学式の日、学校前の横断歩道で……。止まってくれた車に丁寧にお辞儀してて、なんかいいなって。あと姿勢が良くて、きれいだなって』
『うんうん、それで?』
『あとは校内でちょくちょく見かけるだけで……。いつも後ろ姿で気づくんですよ、だから顔もろくに知らなくて。でも、いつ見てもきれいだなって思います』