暗黒王子と危ない夜
やっぱり本多くんは怖い。
言葉ひとつで、表情ひとつで、あたしの熱を簡単に上げておかしくさせるから。
「ほら、そーいうとこ」
「……?」
「相沢さんのその恥ずかしがってる顔とか態度とかが、いちいち男を煽るんだって」
熱を帯びた瞳、声。
もう雨の音も聞こえなかった。
「──おれのこと見て」
誘い出すような声にくらりときた。
目の前に影が落ちて、冷たい手があたしの首元に……触れて。
囚われて、がんじがらめ。
流される……。
わかるのに、触れられた部分から毒が回ったみたいに体が動かない。
「っ、……ん」
───唇がやさしく重なった。