暗黒王子と危ない夜

やっぱり本多くんは怖い。

言葉ひとつで、表情ひとつで、あたしの熱を簡単に上げておかしくさせるから。



「ほら、そーいうとこ」

「……?」

「相沢さんのその恥ずかしがってる顔とか態度とかが、いちいち男を煽るんだって」



熱を帯びた瞳、声。
もう雨の音も聞こえなかった。



「──おれのこと見て」


誘い出すような声にくらりときた。


目の前に影が落ちて、冷たい手があたしの首元に……触れて。



囚われて、がんじがらめ。



流される……。

わかるのに、触れられた部分から毒が回ったみたいに体が動かない。




「っ、……ん」


───唇がやさしく重なった。
< 92 / 470 >

この作品をシェア

pagetop