声を失った女との恋【完】
新しい家族

吹雪side

付き添うだけで何も出来ないまま、我が子が誕生した。

女の子だった。

「吹雪、どっち?」

「親父、女の子」

すると『おめでとう』と親父や伯父夫婦、ルネの両親が言ってくれて抱いて貰った。

看護師さんが『ルネさんの、お母さん、いらっしゃいますか?』と声がかかった。

「はい。私ですが」

「あの、今から2時間分娩室で待機なんですが、娘さんしゃべれませんし、付き添っていただきたいのですが、本人さんもお母さんが希望されてまして、手話になりますから」

「わかりました。今夜は私が付き添う予定だから、吹雪君は帰って休んでね」

「でも」

「私も帰るし、そうしてくれ・・・吹雪君」

「お父さん」

お母さんは看護師さんと分娩室に入って行った。
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