◆あなたに一粒チョコレート◆
vol.2

広がる距離

****

放課後。

「春。私彼氏と待ち合わせだからこのまま駅出るわ」

菜穂がリップを塗り終えて手鏡から顔を上げた。

「オッケ。じゃね。土日にラインする」

「ん」

私は隣の席の瑛太に向き直り、声をかけた。

「ね、瑛太一緒に帰る?」

私の声に、スクバに教科書を詰めていた瑛太が顔を上げた。

「俺、部活」

「そっか。じゃあ帰ったら連絡してよ」

「分かった」

「あ、それか私暇だから買い出し済ませとこうか?」

何気なく私がこう言うと、瑛太は首を振った。

「飲み物だけでもかなりの量だぞ。ひとりじゃ無理だ」

「あー、それもそうか。じゃあやっぱ二人で行こっか」

「ああ」

私は瑛太に手を振ると、帰る準備を始めた。
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