◆あなたに一粒チョコレート◆
vol.6

あなたに一粒チョコレート

***

泣きながら、スマホをタップした。

たったワンコールで、菜穂につながる。

「菜穂っ、私、私っ」

菜穂が笑った。

『はいはい。分かってるよ、春。私はちゃんと分かってる。思いきり頑張りなさい!今からレシピ送るから』

菜穂の声の後、スマホからヨシ君の声が聞こえた。

『春ちゃん、頑張れよ』

「ヨシ君……うん、私、頑張る」

涙を拭くと、私は空を見上げた。

伝えなきゃ。

この想いを瑛太に伝えなきゃ。

今更遅いのは分かってる。

だけど、この気持ちを一生伝えないままなんて、絶対に後悔する。

伝えた瞬間、恐らく幼馴染みの関係は終わってしまうだろう。

でも、それでもいい。

想いを伝えないままいるよりも、ずっといい。

私は菜穂から届いたレシピを開くと、大急ぎでスーパーを目指した。
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