スターチス

クリスマス



7人のルームシェアを経て2人で住み始めたあたしとユーイチ。
気付くのは遅くなったけど、晴れて恋人になり、ルームシェアから同棲に変わり、今年は初めて“2人だけ”のクリスマスを迎える。

今年はイブが日曜日でクリスマスが月曜日ってことで、24日は遊びに行くって話をした。
どこに行こうかは全然決めてない。

よくよく考えてみれば付き合い始めてから“デート”ってものをしたことがない。
ユーイチは仕事で忙しくて基本的に家にいる時間が少ない。
家にいても仕事を持ち帰ってくるから2人でいる時間なんて朝食と夕食と寝る前に少し話すことくらい。

会社は同じだけど顔を合わすことなんて無いし、出勤時間も同じだけどユーイチは早く出る。
休日出勤だってするし、遊びに行く時間なんてない。
休みが合っても疲れてるユーイチに「遊びに行こう」なんて言えなくて、少し散歩をするくらいだった。

「帰ってくるのかな…」

ソファに座り、時計を確認して溜息。
結局、イブの今日も仕事が入って出勤してしまった。


朝6時、物音で目が覚めてリビングに行くとスーツを着たユーイチがコーヒーをたてていた。

「悪い、起こしたか」
「…仕事?」
「午前中だけ行ってくる」
「うん」
「ごめんな」
「ううん」

目をこすりながらソファーに座る。
置いていたブランケットを膝にかけてテレビを付けた。

「寝てていいのに」
「ユーイチ送ってから、また寝るよ」

隣に座ったユーイチに笑顔を向けてからテレビを見る。

絶対休みだっていう保証はないのに休みを取ってもらわなかった私も悪いと思う。
良し悪しの話ではないし、仕事だから仕方ないことだっていうのもわかってる。
わかってるけど、一日くらい、しかも特別な日くらい朝から一緒に過ごしたかったなっていう残念さは残る。

我が儘は言えないから、行き先を決めていなかった私のせいでこうなったって思うようにした。

「遊びに行くって言ったのにごめんな」

隣からユーイチがあたしの頭を撫でた。
そして、それを寄せてくっついた。
頭からシャツのすれる音とコーヒーの匂いとユーイチの香水の匂いがする。

あたしは少し距離を詰めて、ユーイチにくっつくと頭を撫でてた手がだんだん下にさがってきて、おでこを撫でたり頬を撫でたりしてくる。

「なんなのー」
「なんとなく」

あの日以来、あたし達が恋人らしくなってからは急にスキンシップが多くなった。
今までは必要最低限でしか触れなかったのに、少し近づけば確かめ合うように触れ合ってる。
こうやってあたしの顔を触りまくってるのもその一つ。

シェアしてた頃のユーイチからは考えられないくらいのスキンシップ。
優しく触ってくれるし、たまに意地悪もされるけど、好きな人に触れられるってなんだか嬉しい。

「……早く」
「ん?」

聞いていいのかな、と思いながら聞きたい言葉は重い。
仕事に行く人にこんなことを聞くのはいけないってわかってるけど。

「早く、帰ってこれる、かな?」

早く帰ってきてねって言えたら可愛いんだろうけど、言えない自分が悲しい。
それに目も見て言えない。
忙しいのがわかってるだけに我が儘言えなくて俯いてしまう。

そんなあたしでもユーイチは何も言わず、頭にキスを落として「頑張る」とだけ行って出勤してしまった。


―――そして気が付けば、もうすぐ15時。
お昼には帰ってくるかと13時までお昼ご飯を我慢したけど、連絡も帰宅もなくて、お昼ご飯を食べてしまった。

食後のコーヒーも飲んで、テレビを見ても時間ばかりが気になって、結局何もしないまま15時になった。
このままだといつも通りの帰宅なんだろうと思う。

もしかしたら夕方には帰ってくるだろうけど、きっと疲れて帰ってくる。
どこに行こうか!なんて言えないし、明日はまた出勤だからゆっくり休ませてあげたい。

二度寝するって言ってたけど、もしかしたら!っていう期待があって寝なかったから少し眠い。
自分の部屋から毛布を持ってきて、ソファーに寝転ぶと自然と眠りに落ちてしまった。
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