イジワル上司に甘く捕獲されました
「いえっ、いえっ、無理です!
そんな荷が重すぎますしっ。
そもそも私、事務職なのでっ。
しかも札幌って、引っ越しが……!」

私は首をブンブンっと音がなりそうな位、横に振る。

「いや、橘くんは後輩指導も丁寧だし、業務にも慣れてきているだろう?
そろそろ違う業務に挑戦してみてもいいんじゃないか?」

そう言って部長は手元の資料に目を通して。

「それに……確か橘くん、札幌に妹さんが住んでいるよな?
しかも新しい仕事にも挑戦してみたいって言ってなかったか?」

……何故それを知っているのですか、部長……。

私の考えていることが表情に出ていたのか、部長は可笑しそうに言う。

「今月初めの新入社員歓迎会で話してただろう?」

……そうだった。

私の席の近くに部長が座っていて妹の話をしていた……。

当時の記憶が鮮明に蘇ってきた……。

そう、部長に業務の話を聞かれて確かに私はそう答えた……。

私の憧れの城田先輩のように仕事ができる人になりたいと……熱く語ってしまった。

ああ、まさか。

あの時の話を今、持ち出されるなんて……。

「……た、確かに言いましたけれど……」

立場が悪くなってきたような気がして私はしどろもどろになる。

「うん、まぁ、確かに転居をともなってしまうから、なかなか難しいんだけどね。
ただ、妹さんという家族がいらっしゃるなら行きやすいかなと単純に思ったんだよ。
事務職の定義のひとつに転居をともなう転勤はしない、とあるが、今回は特例でこの業務に就いてもらう場合は営業職に準ずるかたちにしようかと人事部と話し合っているところなんだよ。
なので勿論、各種手当も出ることになる。
橘さん以外にも打診している社員はいるのだが……私としては橘さんが適任ではないかなと思っているんだ」
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