Spice‼︎
流されるまま、なすがまま
桐原が部屋にやって来たのは休日の朝だった。

土日に梨花のために時間を使う事は
休日出勤の帰り以外はほとんど皆無に等しかった。

梨花はヒロとまだベッドで眠っていた。

朝から何度もベルを鳴らされては堪らない。

梨花は仕事で昨晩遅かったヒロを気遣って
外へ出た。

「困ります。
こんな時間に部屋に来られたら…」

「お前が俺に逢おうとしないからだ。」

桐原はスーツではなく真っ白な麻のセーターにデニムを履いてきちんと上げてる前髪も今日はそのままで
いつもより何だか若く見えた。

「雰囲気違いますね。」

「休みの日はいつもこんな感じだよ。」

「何て言って出て来たんですか?」

「何にも…ただ出かけて来るって。」

「大丈夫なんですか?」

「俺の家のことはどうでもいい。

それよりちゃんと話をしよう。

人目に着くからホテルでも入るか?」

結局目的はそれなんだと思った。

桐原は梨花の腕を掴んで近くのホテルに向かって歩いて行く。

梨花はカフェの前で

「ここで話しましょう。

この近所なら会社の人には会いませんよ。

風間くんくらいで…」

と立ち止まって言った。

桐原は仕方なくカフェに入った。

「俺と寝るのはもう嫌か?」

「はい。」

「へぇ。あの男で満たされてんだな。」

桐原はそんな梨花がますます欲しくなった。


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