Spice‼︎
ただ獣のように
桐原の車で朝帰りした梨花を見て
風間はすごく悲しい顔をしていた。

それに気づいた桐原は車を降りて

「俺が無理やり誘った。」

と言った。

梨花は風間にただ

「ごめん。」

と謝った。

謝るしかなかったが
胸が痛くて上手く伝えられない。

「僕たちは初めからこんなもんじゃないですか?

いつも桐原さんと梨花さんを共有して…

こんな想いは何度もしてた。

だから大丈夫です。」

梨花は風間の腕を掴んだ。

「どうしてここに来たの?」

「僕も梨花さんに謝りに来たんです。

お見合いは断れない。

だから…」

梨花は掴んでいた手を離し、
瞳を閉じた。

風間はやはりもう帰ってこないつもりだ。

「梨花とはキッパリ別れるって事だな?

そうだよな?

お前はあの時、梨花じゃなく会社を選んだんだ。

俺を引き摺り下ろした時に覚悟を決めてただろ?」

「確かにそうでした。

だけど…それでも諦めきれなかった。

梨花さんが桐原さんを好きだと分かってたけど…
あなたのしたことは許せなかったし、

あなたはきっとまた梨花さんを苦しめるでしょう。

でも梨花さんはそれでも桐原さんなんですよね?」

風間を失う哀しみで梨花は何も考えられなかった。

涙がポロポロとこぼれ落ちて止まらなかった。

その涙を拭ったのは桐原だった。

「梨花…なんで泣くんた?

お前にはオレが居るだろ?」

「梨花さん…」

風間が梨花の肩に手を掛けようとしたが
それを桐原が遮った。

「お前は他の女と結婚するんだろ?

梨花のことはオレが幸せにする。

償いながら必ず幸せにするよ。」

風間は梨花に優しく言った。

「梨花さん、梨花さんはこれからきっと幸せになれます。

一番好きな人と一緒になれるんです。

だから…僕の事は忘れて幸せになってください。」

そして風間は自分の場所へ帰っていった。











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