Spice‼︎
エレベーターまで必死で走り、
誰かに助けを求めようとした。

後ろから多村が追いかけてくるのが見えて
梨花は焦ってエレベーターのボタンを何度も押した。

捕まりそうになって瞳を閉じる。

その時、エレベーターが開いて目の前に風間が立っていた。

「風間くん、助けて!」

風間は胸元を押さえた梨花と
その後を追いかけて来た多村課長を見て
何が起こったかすぐにわかった。

多村は風間を見て、急いで引き返そうとした。

「違うんだ!そんなつもりじゃなかった。」

必死で言い訳をする多村から梨花を遠ざけるため、
風間は梨花の手を引き、庇うように自分が盾になる。

「何てことを…これがどんな事かわかってるんですか?」

と多村に向かって怒鳴るとエレベーターの扉を閉めた。

梨花をとりあえず海外事業部の自分の部屋に連れて行った。

既に海外事業部は誰も居なかった。

「梨花さん、大丈夫ですか?」

風間は自分の上着を脱いで梨花にかけた。

「とりあえず多村課長と話しをして来ます。

このままで済ます事は出来ません。

明らかにセクハラですよ。

いや、もっと深刻ですよ。」

梨花は震えながら

「大ごとにしないで。

誰にも知られたくない。」

と言った。

風間は思わず梨花を抱きしめてしまった。

「もう大丈夫です。

表沙汰にはしませんが、多村課長は許せません。

僕に任せて貰えますか?」

梨花は風間の腕の中で頷いた。

風間の事は誰より信用出来るし、
今の風間なら多村を何とか出来る力もあった。

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