Spice‼︎
sentimental short trip
梨花は部屋に戻るとそのままベッドに倒れた。

ヒロが側に寄ってそっと顔色を伺う。

「大丈夫?

なんかあった?」

ヒロの心配する声に梨花は気持ちを抑えきれず
ポロポロと涙が零れ落ちてシーツを濡らす。

それを見てヒロはただ事では無い事を察知した。

「梨花…どうした?」

ヒロが梨花を抱きしめると
梨花は大きな声で泣いた。

胸を痛めてるのが
多村にセクハラされた事なのか
風間と本当にもう終わった事なのか
梨花にもわからない。

ヒロが困り果てていると
桐原がタイミング良くやって来た。

桐原を見ると梨花は少し戸惑っていた。

「どうした?」

梨花は何も言わず、
涙を止めようとしても止められず
桐原は黙って梨花の髪を撫でた。

実は桐原はここに来る前に風間から連絡をもらっていた。

梨花が多村のセクハラに遭った事を風間は桐原に話していた。

「ショックだったと思いますから
知らないフリをして下さい。

会社は2、3日休ませてあげて下さい。

その間に多村課長は異動するなり退職させるなりこちらで手を打っておきます。

2度と梨花さんの目に触れる事がないようしますからそれまでは休ませて下さい。」

桐原は風間が以前よりずっと
後継者らしくなった気がした。

その姿が頼もしくもあり、悔しくもあったが
その為に梨花を諦めた風間を少し不憫にも思った。




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