Spice‼︎
とある朝、会社に行くと辞令が貼ってあった。

桐原政宗という名前を見つけて梨花は立ち止まる。

営業部次長を命ずる。

(課長出世するんだ。)

桐原はこの5年課長のままだった。

3課の課長から1番大きなクライアントを持つ1課の課長に変わったのが出世といえば出世なのかもしれないが…

優秀な桐原がなかなか出世しないのは
専務からの許しが出ないという噂もあったが
とりあえず梨花は桐原が出世したことが嬉しかった。

(お祝いしなきゃな。)

そう思ったがあくまでも桐原とはカラダだけの関係だった。

時間が経つにつれ梨花は自分が特別な存在だと勘違いしてしまう。

深入りしちゃダメだと常にブレーキをかけてる。

その場を離れようと前を見ると風間が立っていた。

風間は梨花を見て微笑んで
梨花も目配せする。

だけど風間とも恋人ではない。

風間の恋人は一緒に働く茉美なのだ。

時々自分の存在がわからなくなる。

彼氏なんて要らないし、愛して欲しいなんて無駄なことだと思ってるのに
最近の梨花はそれを風間に望むときがある。

桐原が無理だから風間なのかもしれない。

風間を好きになりそうだから桐原が必要なのかもしれない。

梨花は自分の気持ちがわからない。

ただ2人とも失いたくなかった。

どちらかを失えばきっとどちらかに依存してしまう。

愛されたいと思ってしまうかもしれない。

そんなとき桐原とすれ違う。

「今夜いつもの場所に8時な。」

そして梨花はまた桐原のために下着を買った。


< 47 / 265 >

この作品をシェア

pagetop