Spice‼︎
寂しさがその隙を作る時
桐原が帰った後、梨花は不思議な気持ちになった。

あんな桐原は初めてだった。

もしかしたら嫉妬してるのかもしれない…

そんな風に思いながら桐原に付けられたシルシを鏡で見てみる。

胸やお腹、太腿…背中にも付いてる。

そして首筋にも。

「…これじゃ外出られないな。」

困ったようなフリで独り言を言ったが
内心は初めて桐原のモノになれた気がして嬉しかった。

突然着信音が鳴って
梨花はドキドキしながら相手の名前を確認する。

電話は土方からだった。

「もしもし。梨花…頼むから戻ってくれないか?」

その電話に梨花はウンザリする。

「嫌だって言ってるの!
そういう電話ならもう出ない。」

「待て!戻らないのは風間のためなのか?」

そう言われて考えてみる。

確かに風間の為でもあるがそれだけじゃなかった。

「そうじゃなくて、もうあの会社に行きたくないの。

風間くんとの仲も知られて好奇な目で見られるのも嫌だし、居心地が悪いでしょ?

何よりあの社長のやり方に腹が立って仕方ないの!
公私混同も甚だしいでしょ?」

「だけど…苦労して入った会社だろ?

俺たちみたいなコネの無いヤツがあそこに採用されるのは奇跡みたいなもんで、すごい倍率だったハズだ。」

梨花はその時のことを考えると辞めるのはホントに悔しかったが
もう、自分には消せない過去が付きまとう。

社長の息子を誑かした女というレッテルを貼られ
一生色眼鏡で見られるのも嫌だった。

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