Spice‼︎
「でも…貴方がいるなら俺は用無しですから。」

ヒロは断ったが桐原はヒロに居てくれと更に頼んだ。

「梨花が寂しくしてるのが不安で見に来たけど
バーテンさんがいるなら安心出来ます。

俺はすぐ帰らなきゃいけないんで…」

梨花はまた桐原に突き放された気分になる。

「せっかく来てくれたのにもう帰るの?」

「悪い、今夜は遅いし…時間がない。
一目見て帰るつもりだった。」

そして桐原はもう一度キスすると

「おやすみ。」

と言い残して去って行った。

残された梨花は明らかに寂しそうだった。

ヒロはそんな梨花を後ろから抱きしめる。

「続きしましょうか?

それとも帰った方が良いですか?」

梨花は振り向いてヒロに抱きついた。

そしてもう一度キスをする。

「帰らないで。」

「わかりました。」

その夜、梨花はヒロに抱かれた。

ヒロは優しくて、
気持ちよくて、心地よかった。

「あの人…既婚者ですよね?」

「…うん。バカだって思ってるでしょ?」

「いえ、俺の相手も既婚者ですから。」

ヒロには結婚してる恋人がいた。

彼女と思うように逢えず、浮気を繰り返している。

「だから気持ちわかりますよ。」

桐原でも風間でもないオトコは
他に好きな人がいながら梨花を抱く。

「俺たちいいパートナーになれますよね?」

「うん。」

嫉妬も束縛もしない男は気が楽だ。

そして誰にも逢えなくて寂しい時、
一緒に居てくれるヒロは梨花にとって風間に変わる男になった。

夜から仕事のヒロと無職の梨花は
夜ヒロの店で飲んで一緒に梨花の部屋に帰り
ヒロは夕方、梨花の家から仕事に行くようになった。

昼間から二人で抱き合ってご飯を一緒に食べて
毎日一緒に居るうちに幸せを感じるようになった。




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