ある日、ビルの中、王子様に囚われました。

それと同時に、ピンポーンっとインターフォンが鳴った。
私の話を聞こうともせず、一方的に電話は切られた。
ただ、兄の様子からして嘘ではなく緊急事態なのだと理解はできた。


親が来る。
数年ぶりに会うというのに、逃げ出したい衝動に駆られる。
けれど、インターフォンが鳴ると、少しだけ期待してしまう自分も居た。

「……誰ですか?」
「お迎えにあがりました」

「えっと兄のお知り合いの方でしょうか?」

私がおずおずと質問すると、その人は優しく笑った。
「はい。君の兄、明良(あきら)とは大学の同級生です」

ドアを開けて、その人を見た瞬間息を飲む。

銀のフレームが知的で、切れ長のしゅっとしたブラウンの瞳、少しも乱れの無いセットされた髪。
そして黒のストライプスーツがストイックに着こなされていて、一瞬言葉を失ってしまった。

どうしたら同じ人間でもこんなイケメンが生まれるんだろう。
この人、生まれた時から良い生活をしていたに違いない。

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