ある日、ビルの中、王子様に囚われました。

「あの親族の血が流れてるとは思えないほど普通――いや、可愛らしい子だね」
ネコっ毛の色素が薄い髪を揺らしながら、からかうように笑ってきた。

弁護士だと紹介された新澤さんは、天宮さんとは対照的な表情がくるくる変わる方だった。

「社長の血の方が近いんでしょうね。会議の方は?」
「散々だよ。大金を前に人は醜くなるね」

弁護士の新澤さんはネクタイを緩めながら深くため息を吐く。
すると電話を終えた酒崎さんもこちらにやってきた。

「噂は聞いております。経理担当の酒崎です。いつもは下のフロアなんですが、此方が社長が居なくて手が回らないので上がってきました」

「ああ、俺が無能な為にすまないね」

「仕方ないですよ」

ネコの目のようににんまり笑う酒崎さんに、目が全く笑っていない天宮さんが微笑むと火花がばちばちと飛び散った。

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