風車と薊と君と

「聞こえてた?」

「あ、ごめん。俺の名前は雨野幸人。
幸人って読んでよ。」

「そう。幸人ね。じゃあさ、幸人。貴方は何故こんなところに来たの?」

よく昔から小学生の男子は好きな子をいじめたくなると言うが今ならその気持ちがわかる。

困らせてみたい。戸惑う姿を見てみたい。

「決めつけるのはよくないよ。もしかした俺は昔からここで暮らしていたかも知れない。」

さぁ、どうでるかな?

「それはないわよ。

あのね。この岡はずっと遠く。村のはじっこまで見渡せるの。前まで空き家だった家に車が入ってきた。粗方引っ越して来たのでしょう。

そして貴方がその家から飛び出してきた。

まあ、すぐに見失って絵を描いていたけどね。

それにこの村の人だったら絶対にこの岡には…………。」

最後は聞き取れなかった。

ただでさえ今にも消えてしまいそうな花の声はさらに小さく。弱々しく声を出していたのだから。

「あ、そう言えば名前。」

自分の中で花といって気づいた。

「そう言えばまだいっていなかったわね。

苧環由梨。ユリってよんでね。」

その笑顔は時間を止める魔法を使ってずっと見ていたいと思うほど眩しく、輝いていていて、すっかり見惚れてしまっていた。














その光の裏に暗闇があるなんてことには気づかないまま。
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