ヴァージンロード <続>Mysterious Lover
2. 思い出

「当機はまもなく、着陸態勢に入ります。お席をお立ちのお客様は、お席にお戻りください」

オレは、小さな窓の外に目をやった。
東京が、近づいてくる。

奈央さんとオレが、出会った街が。
奈央さんがオレを、受け入れてくれた街が——。


オレたちの間には、お互いの家庭環境が絡んだ結構複雑な事情があって。
オレは、彼女がオレを認識するずっと前から、8年間も彼女に片想いしていた。

それを告げた時、奈央さん、めちゃくちゃびっくりしてたっけ。


初めて奈央さんの写真を見た、あの日のこと。
オレは今でもはっきりと思い出せる。
高校2年の時、季節は初夏だった。

少し前から、オレは親父の様子が時々おかしくなることに気づいていた。

ぼんやり、心ここにあらずって雰囲気で。
呼びかけても気づかない、なんてことが何度かあって。

そんな時、決まって親父は同じ手帳を広げていた。
それをじっと見下ろしながら、ため息をついていて。

どうしたのか聞いても、「なんでもないよ」って笑うばかりで。
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