ヴァージンロード <続>Mysterious Lover
5. 暗転
『おかけになった電話は、電波の届かない場所にあるか……』
ため息をついて、スマホをベッドに放り投げた。
一睡もできずに迎えた朝。
何度かけても、奈央さんはつかまらなかった。
昨夜の出来事が、脳内でオールリピートしてる。
伏せられ反らされる、傷ついた瞳。
遠ざかっていく、震える背中。
音をたてて閉ざされた、目の前のドア。
……間違ってたのか? オレは。
あの人を、抱いてしまえばよかったんだろうか?
欲望のままに、抱いてしまえば。
何も、語ることなく。
打ち明けることなく。抱いてしまえば。
あの人は、笑ってくれたんだろうか?
もう太陽はかなり高く昇っていて。
でもオレは、ベッドから起き上がることもできず、ただぼんやりと寝そべっていた。
まる一日何も食べてないのに、空腹感も感じなかった。