ヴァージンロード <続>Mysterious Lover

あからさまに刺々しい声がして、モデル並みの長身の女性スタッフが近づいてきた。

わ、訳アリ?
伸ばしかけていた手が止まった。

「え、でも加納さん……」

「あの撮影の時、あなたお休みだったから知らないんでしょうけど。どうして1点だけ本社保管になってたか、疑問に思わなかったの? 中里さんも中里さんだわ。こんなもの、お客様に買わせようとするなんて」

中里さん、てあの広報の人だよな……?
ストイックなメガネ姿が脳裏にひらめいた。

「で、でも、中里さん、こちらのお客様のこと説明したら、ご存じのようでしたし……」

「訳アリってどういうことなんですか?」
オカルトっぽい曰くでもついてるんだろうか?

オレが聞くと、加納と呼ばれた女性は、オレに顔を近づけ、
得意そうにささやいた。

「いえ、実はぁ、あの撮影で使用したリングはすべて、モデルさんのサイズに合うものを事前に用意しておいたんですけど。このリングだけ、いざ撮影って時になって、はまらなかったんです。モデルさんは、指がむくんじゃったかしら、なんて笑ってくれましたけど。その後が、大変で。これだけ小物にひっかけたり、固定して立たせたり、いろいろ試すものの、何度やってもうまくいかなくて。もう現場はめちゃくちゃ」
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