鶫さんはこんなひと
「渡辺はこれで良い?」

鶫主任が声を掛けた相手はテント張りを終えて日影で一休みしている人だった。おそらく営業…一課だったか。

「ああ。ありがと」

そういってスポーツドリンクを受け取っていた。
あれ?ビールじゃないけど良いのかな。
私もお疲れ様ですと、100均のおしぼりとプラコップを渡す。

あ、そっか。一応プラコップも差し出したけれど、帰りの運転も任されてるのかも知れない。
そう思いながらも渡辺さんはありがとうと言って、私からおしぼりとプラコップを受け取った。
何だかその表情も力無い様な。

「ビールじゃなくて良かったんですか?」

次のグループの所へ行く途中に鶫主任に訊いてみた。

「あー、何か失恋して自棄酒飲んで後輩に迷惑掛けたみたいでね。しばらくはいいんだって」

「わ、そうだったんですか」

それはそれは…。

「同期の方ですよね。そんなに荒れるなんて長い付き合いだったとか、結婚考えてたとか?」

「…まあ、結婚は考えてたみたいなんだけれど…。あいつも昔から一人で勝手に盛り上がる所があったしな…」

鶫主任はゴニョゴニョとはっきりしない口調になった。何だか問題のある人なんだろうか…。

「お相手、社内の方ですか?」

「というか契約社員らしいんだ。更新せずにそのまま」

「元気無さそうでしたもんね。今日がきっかけにでもなると良いんですけど」

そういう事もあったなあと振り返る事が出来る様になれるには、新しい出会いがないと。
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