男嫌いな女王様とクールな臣下
誰かが顔にさわってる。

頬を撫でたり、首筋に触れたり。

朱音は男性に触られるのが、極端に苦手だった。

苦手どころじゃない。拒否反応が出でしまう。

普通なら、完全にアウトだ。

逃げ出して脱兎のごとく走り去ってるはずだ。

それなのに……

あっ……触れらてる。とは思ったけど。

朱音は、手で押しのけるようなことにはならなかった。

体の方も、不思議なことに、拒否反応が出なかった。

彼が自然に、支えるようにしてくれたからかな。

影山が、あたふたしてやって来た。

朱音お嬢様と大げさに叫びながら、手には体温計と濡れタオルを持っていた。

「大変です。お熱が38.5分もあります。すぐにお休みになってください」

曲がりなりにも、大会社の社長という立場にいるというのに、影山は朱音の身に何かあるといっぺんに立場を忘れてしまう。

「解熱剤飲めば、大丈夫だから……影山、落ち着きなさい」

そう言われたところで、熱で死んだようにだらんとなっている、朱音の様子がよくなるわけじゃない。

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