お見合いですか?
 「寝るなよ」と言われ、そうだ、今の内に会議の内容をまとめておこうと、バッグからノートパソコンを取ろうとして、後ろの座席に体の向きを変え、手を伸ばす。
 「何してんだ?」と、聞かれ、「いや、パソコン取ろうと思いまして。」
「あぶねーから、座ってろ。子供か!」
「子供じゃないし、危なくないですよ。」
とは言え、大きい声を出されたので、ノートパソコンは諦めておとなしく、座り直した。

「そう言えば、会議の進行役、慣れてたな。」
「えっ、まぁ、前の会社でも、やってましたから。開発したメニューとか、季節のフェアの企画とか、考えて、会議に通すのが私の業務でしたから。」
「そっか、じゃあ、うちでもやってもらおうかな。小西は事務要員だから、人前で話すのは慣れてない。林は、やれることは、やれるけど、あそこまで、サクサク進められない。やっぱ、向いているんだな。」
「そうなんですか、井川君は?」
「あいつは、まだ機会がないから、未知数だな。」
それから、仕事の話とか、色々盛り上がった。
主に私が話す事に相槌を打って、更に話を振ってくれる。

 「支社長って聞き上手なんですね。なんて言うか、話してて、楽しいというか、  居心地が良いです。」
「そりゃ良かったな。 俺もたのしかったよ。君の話は、聞いててわかりやすい。」
「単純って言いたいんですか?」
「いや、なんかさぁ、結局何が言いたいの?って思う奴いるじゃん。」
「ああ、酔っ払いに多いですよね。まぁ、素面でそれだとキツいけど、でも支社長は、嫌な顔もせずに話あわせちゃうんでしょ?」
「さぁ?適当に流すけど。」
「何となくなんですけど、会話の進め方とか、林さんに、似てる気がします。あっ、お父様の方です。 林さんと話してると、こっちが話を聞いているって思ってても、いつの間にか、私が聞いて欲しいこと、話ちゃってるんですよね。」
「ふ~ん」

 それきり、彼は黙ってしまった。
う~ん、何かまずい事でも言ってしまったのだろうか。???いや、何も言ってないとおもーう。しばらくすると、サービスエリアに着いた。
「じゃあ、ここから交代な。取り敢えず、トイレ行ってくる。」
彼が、降りようとするので、私も慌てて降りた。
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