副社長と愛され同居はじめます
「え……」

「絶対、嫌がらせとか。くるくるーきっとくるわー」



まるで他人事のような……って間違いなく先輩方にとったら他人事なんだろうけど。
けらけら笑って忠告してくれた。


めんどくさい、確かに。
女の嫌がらせの面倒くささは、店での経験で重々身に染みている。


だから勿論それもすこぶる憂鬱なのだけど、今私がもっとも不安に思っていることは、やっぱり仕事であった。



「そんなことより、今目下の問題は仕事ですよ。秘書なんて何したらいいんですか、私にできるわけないじゃないですか」



ぽろ、と憂鬱のままに泣き言を零す。
てっきりまた「カワイソー」とか言って笑い飛ばされるかと思ったけれど、ちょっと予想の反応とは違った。



「何言ってんの、そんなもん。なるようになるっしょ」

「ええ? そんな簡単な」

「簡単なわけないけどさ、っつかやるしかないじゃないの。副社長の横暴が云々、そんなことは関係ないっしょ。うちら社員は、辞令があればその通りに働くしかない。給料もらってんだし、それが無理なら辞める。やるかやらないか、そんだけじゃない?」



さらっと物凄く、厳しいことを言われた。
けれどその衝撃は、ぽろっと私の目から鱗を剥がし落とす。


確かに、先輩方の言う通りだ。



「ま、お気の毒ー、とは思うけどぉ」



最後はやっぱり、笑い飛ばされたわけだけど。

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