副社長と愛され同居はじめます
確かに、このところの私は仕事で手一杯で他のことを考える余裕なんてなかった。


彼なりに気を遣ってのことだったのだろうけれど、それにしたって。



「あと、なんかお金の他にレトルトの食品だとか沢さんに作ってもらったおかずも送ってくださったそうで」

「それは、沢さんに聞いた。大学に行ってる息子に時々差し入れに送ると言ってた」



沢さんとは、ハウスキーパーで来てくれている人だ。
彼女の勧めでやったことだから、これは間違ってはいないはずだと言いたげな、その表情を見ていると。



「……ありがとうございます。弟も喜んで……ぶふっ」



我慢できずに吹き出してしまった。
だって、百万なんて大金を送っておいて、それなら食事の心配なんてしなくても毎日外食だけでも余裕で余る。


酷くちぐはぐな感覚が可笑しくてしょうがない。



「笑うな」

「だって」

「……あの百万は、確かに適当に決めた金額だったが、小春は弟をしっかり社会人として稼げる男にしたいんだろう」

「はあ、そうですが」

「だったら、大学のうちに積める経験は積んでおくべきだし、資格の勉強もしておくべきだ。金はあっても時間は貴重だ、社会人になってからじゃ忙殺されて勉強どころじゃなくなるぞ。その為の仕送りだ」

「あ……なるほど」

「……と、弟に言っとけ」

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