ムシ女
体が小さくなってしまったあたしに気が付かず、美衣は部屋を出て行ったのだから。


「美衣も、この実験室でいなくなったんだ」


そう言ったのは和だった。


見回りに来た先生がここで美衣を見かけ、危ないから外へ出るように促したあと、美衣は姿を消したのだと言う。


話を聞きながら、あたしは陽介君の家にいたミィを思い出していた。


まるで人と会話ができるような黒猫。


大きな目は、親友のミィに似ていたかもしれない。


「嘘でしょ、まさかそんなことが……」


いや、ないとは言い切れなかった。


あたし自身がこんな姿になってしまったように、ミィもなんらかの原因で黒猫になってしまったのかもしれない。


そしてあたしと同様、陽介君の家に連れて行かれた……。


ミィという名前をつけたのは、きっと陽介君があの猫を美衣だと気が付いていたからだ。


しっぽを切断されたミィの姿を思い出す。


早く、家から出してあげないと!
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