ムシ女
「あぁ。通じるようになったよ」


そう聞いてあたしはすぐに自分の体を調べた。


しかしスマホがない。


昨日着替えた時に一緒に置いてきてしまったのだ。


「ねぇ、あたしも両親にメールがしたいの。連絡しておかないと心配かけるから」


今ここにいる事が言えなくても、そのくらいの事はしておきたいと思った。


「それならしておいたよ」


陽介君の言葉にあたしの思考回路は停止してしまった。


「え……?」


「百合花のスマホが生きてるなんて思ってなかったけど、確認してみたらちゃんと使えたから。さっき俺からメールしといたよ」


何食わぬ顔でそう言う陽介君。


「じゃ、じゃぁ、あたしのスマホは陽介君が持ってるの?」


「あぁ。そうだけど?」


すごく、嫌な予感がする。


あたしは今瓶の中。


自分で脱出することはできない。


外に繋がるための手段も、陽介君に奪われてしまっている。
< 29 / 155 >

この作品をシェア

pagetop