課長の胃袋をつかみました
4.変わりはじめる
日曜日をどうやって過ごしたかは定かではないけど、気がつけば月曜日の朝だった。
いつも通りお弁当の準備をしに台所へ向かうとなぜか2人分の仕込みがしてあった。

何考えてるんだ、私……
課長に作ってくれと頼まれたわけでもないのに勝手に作ったら自意識過剰みたいだ。
キスされたくらいで……
自分で地雷を踏んだことに気づき猛烈に赤面する。
あれから何度も思い出しては赤面を繰り返している。
きっと課長は誰にだって簡単にキスできてしまうような人なんだ。
なんといっても、彼にとっての私はただの玉子焼き製作機なんだから…
自分で考えて落ち込み、そして課長に対する怒りがふつふつと湧いてくる。
けれど気がつけば2人分のお弁当が完成していたわけである。

課長に会ったらどう反応すればいいのよ…
お弁当、どうやって渡そう…
通勤の途中はずっとそのことばかりを考えていて、気がつけば会社の前に到着してしまっていた。

課のドアの前で深く深呼吸をする。
いつも通り、いつも通り…
思い切ってドアを開け、ホワイトボードを見上げると…

“鈴宮 シンガポール出張 2週間不在”

私の通勤時間を返せ!

どうしようもなくイライラして、同時に言ってくれなかったことが悲しかった。
私はやっぱりその程度か…
なんとも暗い気持ちで始業時間を迎えた。
仕事に熱中していればつらい気持ちは少しは和らぐもので、仕事がたくさんあることを初めて感謝した。



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