課長の胃袋をつかみました
6.通じ合う夜
夜の繁華街での熱烈な告白の後、私は課長に連れられ彼のマンションへやって来ていた。

あのあと2人ともさらに真っ赤になったが、さすがに周囲からの視線にも耐えかねたため、再び課長に手を引かれて歩き出し地下鉄の駅へとやって来た。

この路線は私の家に向かうものではない。
課長は先週のデートで私の家の場所を知っているから、そのことを分かった上でこの駅に来たのだろう。
ということは目的地は別の場所。

課長はしばらく何も言わず黙って歩いていたけど、改札の前に来たときに私の方へと向き直ると真剣な顔をして

「ウチ、来るか……。」

と言った。

先ほどの告白の後で課長の家に行くということが意味することくらい、いくら鈍感な私でもわかっている。

私は今日の下着を思い出したあと、黙ってうなずいた。

繁華街の駅から地下鉄で20分ほど、駅からもほど近いところに課長のマンションはあった。

どこか高級感のある佇まいに、なんだか落ち着かない気分になった。

課長の部屋はスッキリしているというよりはモノがないという印象で、しかしテーブルの上に書類やら空き缶やらが散乱しているのを見るとあまり几帳面な性格ではないらしい。

「悪い、あまり片付いてなくて。」

課長はきまりが悪そうに片付け始めたが、散らかっているのはテーブルの周辺だけであったためにすぐに片付き、私は促されるままその傍のソファに腰を下ろした。

「ビール飲むか?それともコーヒーとか?」
「じ、じゃあ、コーヒーで………」

そういうと課長はキッチンへと向かい、コーヒーマシーンをセットする音がした。
しばらくすると良い香りが漂ってきて、課長がマグカップを2つ持って現れた。

「課長はビールじゃなくていいんですか?」

私が課長を見上げながら言うと、またきまりが悪そうにしながら私の横に腰を下ろした。

「今から真剣な話をするんだから、酒の勢いに任せたくないんだ。」
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