姫、私は誓います。
「姫、これ着てください」

姫のドレスは機能できないほどビリビリに引き裂かれていた。姫が国王の妹家族と生活を共にしたくない理由はこれだったんだ。ジンさんは自分の上着を脱ぐと姫の肩へと被せた。そして義弟の元へ行くと、銃口を額に着けてこう言ったんだ。

「城内でなかったら、この引き金を引いていた事だろう。いくら代理であろうと許さねぇ。命が惜しくば今すぐこの部屋から出ていけ。次やったら容赦しないからな」

私は姫をただ抱き締めた。そうしなければ殺意に負けてしまいそうだったんだ。

「ケイちゃんっ」

強く抱き締め返してきた姫をこの城から逃がして上げる事は出来ないのだろうか。こんな事を私たちがいない間されていたというのであれば姫の心は触れたらすぐに割れてしまう薄い氷のようだろう。
あなただけは泣かせたくなかった。
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