姫、私は誓います。
「俺も。天使なのか悪魔なのか女神なのか何なのか分からなくてさ。いつか目の前から跡形もなく消えちゃうんじゃないかって不安になるんだ」

ラークの言う通りだった。姫に対する愛おしさは尋常では無いくらい大きかった。大輪の花のようにしっかりとして見える姫でも、知れば知るほどガラス細工のように繊細で儚いお人。私たちが気軽に触れるほど頑丈には出来ていないと思い知らされる事がしばしばある。
いつも平然として笑い、不安を一切表に出さない彼女。不意に一人になると今にも壊れてしまいそうな悲しい表情を見せる。私が笑顔よりも先に見た彼女の表情だった。新入りとして挨拶に行った時、少し開いていたドアの隙間から見えた彼女の表情。でも、ノックしてドアを開けるとすぐ笑顔を作った彼女を放って置けないと思った。苦しくても無理に笑う彼女を助けてあげたいと思った。元を辿ればそう思う事自体間違いだったのかもしれない。そう思わなければ彼女に惹かれていく事も無かったし、こんなに切ない思いもしなくて済んだはず。
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