君の本気に触れた時…
彼が自宅の住所を告げると、ファザードを解除したタクシーが静かに動き出した。


「理央さんも、待たせてすみませんでした…。」


目を閉じていた私の方を覗き込むように、斜めに影がさした。


「もしかして…寝てる?」


返事はできなかった…。

私には愛ちゃんのように彼に寄りかかり甘えることなんて出来ない。

今は体一人分空いてしまった彼との距離がとても遠く感じた。

彼とは逆のタクシーのドアに体を寄せたまま、家に着くまで眠ったふりをした。

あんな場面を見てしまったから…心の中がぐちゃぐちゃでとてもじゃないけど普通に話せる自信なんてなかった。

あの短時間の間に2人の間で何があったんだろう…。

気になるのに聞く勇気もなかった…。

私の心の中はいつの間にか彼でいっぱいになっていた。

私は彼が好きなんだ…。

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