あなたに呪いを差し上げましょう(短編)
「…………あなたという、ひとは」


わたくしは死ぬはずだった。それがなんの因果か生かされた。


忌子で、不吉な子どもで、生きていることを大勢からは望まれなかった。望んでくれたひとも心変わりした。


わたくしは、自分の至らなさによってではなくて、外見というどうにもしようがないことによって、儚くなることを決められ、望まれ、願われた。懇願された。


死ぬはずだったのなら、死んでもいいと思っていた。

死ぬべきだと思っていた。

死ぬだろうと思っていた。


いつなら一番いいだろうと、死ぬのなら、意味や価値がある散り方がいいと思っていた。

死ぬとき(終わり)がよければ、生まれたとき(初め)も少しはマシになるだろうだなんて理由で。


「……私も、死にたいと、殺される前に死ぬしかないと思っていたよ」


私は、兄上が好きだからね。不悌をする気にはなれなかった。


ルークさまが静かに目を伏せる。
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