クールな同期と熱愛はじめ

人は階段を使い、犬はスロープを使う。
緩やかな坂ならば、犬に段差ほどの負担はかからないだろう。そうすれば、いつも通りの階段でも問題はなくなる。
CADを操作して、階段の左側にスロープを設けた。

広いリビングは吹き抜けにし、壁伝いにある二階の通路にある窓からも光をたくさん取り込めるように。
玄関に足洗場を設けたり、犬が飛び出さないようにドアを付けるところなど、当初に考えた他の案はそのまま生かした。
庭には可動式の大きなサンシェードを取りつけることで、日差しの強い夏場でも犬が庭で遊べるようにした。
犬にとって滑りやすいフローリングをクッション性の高いタイルにすることも盛り込んだ。

夢中になって作っていると、「おい、宇佐美」と呼ばれて顔を上げる。視界に入った窓の外は、すっかり日が落ちていた。


「まだ帰らないのか?」

「そうだなぁ、だいたいまとまったから帰ろうかな」


両腕を広げて大きく伸びをすると、背骨がボキッと音を立てた。肩も重い。
腕と首を回していると、「おっさんかよ」と桜木くんに突っ込まれた。


「……失礼ね」


ひと睨みしてパソコンの電源を落とす。

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