今宵の月のように
「今帰ってきたところです。

た、ただいまー」

私は言い返すと、家の中に足を踏み入れた。

「ああ、おかえり」

宮本さんはそう言うと、ドアを閉めた。

「さっき、大家さんがきてさ」

そう話を始めた宮本さんに、
「ああ、桃をもらったと言うことですか?

さっき大家さんに会って話を聞きました」

さえぎるように、私は言った。

「何だ、もう知ってるのか」

やれやれと息を吐いた宮本さんに、
「大家さんに“いとこ”だと言ったんですよね?」

私は聞いた。

「関係性のことについて聞かれたらどうしようかと思っていたら、頭に“いとこ”が浮かんだんだ。

彼女のいとこで留守を預かってる、と言ってごまかしといた」

そう言った宮本さんに、
「そうですか…」

私は返事をした。
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