今宵の月のように
7・三日月だけが見ていた
――その時は、俺に“おかえり”と言って迎えて欲しい

宮本さんにキスされた瞬間、私は自分の気持ちに気づいたんだ。

――宮本さんが好きなんだ、と…。

ぶっきらぼうで、そのくせキレイ好きで…だけども面倒見がいいところがある彼に恋をしたんだと言うことを知った。

そんな彼に自分でも気づかない間にひかれて、好きになっていた。

でも…正体を聞いてもいつもごまかされるうえに、何も答えてくれない。

宮本さんのことを何にも知らないのに、私は好きになってしまった。

「――もし本当に悪い人だったらどうするのよ…」

そう呟いたその声は、ソファーで眠っている宮本さんの耳に入っていなかった。

彼が眠っていることにホッと胸をなで下ろす反面、寂しいと思っている自分もいた。
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