今宵の月のように
10・今宵の月は綺麗ですね
夢を見ているんじゃないかと思った。

だけど、目の前にいるのは正真正銘の彼だ。

「よっ、元気にしてたか？」

そう言って笑いかけてきた宮本さんは黒のスーツ姿だった。

「――宮本さん、ですよね…？」

呟くように聞いた私に、
「当たり前だろ」

宮本さんは笑いながら答えた。

それからフッと目を細めると、
「指輪」

そう言って私の首元を指差してきた。

「やっぱり、小さかったんだな」

私はネックレスとして身につけているガラス玉の指輪に視線を向けると、
「でも、身につけていることに変わりはないですよね？」
と、言った。

「うん、いい子だ」

宮本さんはそう言って私の頭をなでてきた。

久しぶりになでられたその手に、私の目から涙がこぼれ落ちそうになった。
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