再会チョコレート

「俺さーー」

 らしくなくしおらしい様子になるカイ。私は彼の言葉を遮った。

「分かってるよ。来年もあげるから。義理チョコ」

「……うん。今年もありがと。大事に食べるから」

「真面目にお礼するとか、らしくない。キモ」

「ヒドっ。年々毒舌がひどくなってる」

「大事に食べるって、変な日本語使うヤツにはこれで充分」

「モノのたとえだろっ。情緒がないな凛は」

「驚き。カイの口からそんな言葉が出るなんて」

「何だと!?」

 いつもの悪ふざけ。
 生まれては消えるどうでもいい会話。
 いつもの私達。

 けれど、〝来年〟は訪れなかった。

 小学校卒業と同時にカイは遠くの県に引っ越した。お父さんの転勤があったらしい。親友(カイママ)と離れることになって寂しがるお母さんの口から聞いた。

 私は後悔した。

 ガトーショコラを渡した時、カイはそのことを伝えようとしていたのかもしれない。それを私はいつもの会話だと勝手に判断し一方的に遮ってしまった。

 あれがカイとまともに話した最後だった。

 小学校卒業前はクラスの文集作りや卒業式の練習などで忙しく、同じクラスとはいえ班の違うカイとはゆっくり話もできなかった。今思えば彼は引っ越しの準備で忙しかったんだろう。いつもみたく私の部屋の扉を軽快にノックしてくることもなかった。

 
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