氷の華
静まったリビングで、鼓膜に残る莉沙の言葉を思い出していた。


─女心を分かっていない証拠ね──


思い出し、一人小さく笑う。


それを分かった所で、今更何の役に立つというのか。


そんなものを分かりたいと思ったのは、もう遠い昔の話しだ。


今の俺は、経営者としての氷藤勲が全て、金が全てだ。


経営者として人心掌握の術は学んでも、女心を学ぶ必要はない。


莉沙から吐かれる言葉で唯一動揺を見せるとすれば、店を辞めると言われる事ぐらいだろう。
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