氷の華
七本目のマルボロを灰皿に押し付けていると、ドアを二回ノックして蘭が入ってきた。


「失礼します。柿沢店長に私をお呼びだと言われたんですけど…。」


不安そうな言葉を吐いてはいるが、それほど緊張はしていない。


完全にドアを閉めてからは、明朗とも取れる笑顔を見せている。


以前なら、緊張を何処かに押し隠し、何事もない様子を見せていた。


容姿は変わりないが、中身が別人と入れ替わったようだ。


「どうかしましたか?」


一言で言うなら、輝きが失せている。
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