太陽に手を伸ばしても
文化祭









「はぁーーっ??お前もうさっさとコクれよ!!…イライラすんなあ!」



智己がうわあああ、と叫んでスタジオの天井を仰いだ。



「うるさいな。声がでかいんだよ」


「いいじゃんか。今いるの俺と陸だけだし、そもそもここ、スタジオなんだからさあ。それにしても、あいつら来るの遅いな」




ふと、目の前を埋め尽くす鏡に目をやる。


壁一面を覆う大きな鏡には、セットされた楽器たちと、退屈そうな僕たち2人だけが映し出されていた。



「ひまだなあ」

「それにしてもここ、めっちゃきれいなスタジオだな」





昨日涼が調予約してくれたこの貸しスタジオで、僕と智己はメンバーがそろうのを待っていた。



でも、あとの3人が来るまでに、この話を終わらせなければ。
なんかちょっと、面倒なことになりそうな予感がする。

どうせ智己なんかに話してもろくな答えは返ってこないだろうし、どちらかというとこの僕に対してじれったさみたいなものをあらわにするだろうと思いながらの「報告」だった。




そして予想通り、智己はものすごくイラついていた。



「なんで智己がそんな風になってんだよ」


「お前が全然白黒つけないからじれったいんだよ、こっちは!!好きなら行動起こせや!!!」




「…だってどう考えても最初からあの二人って両思いじゃん?ここで僕がさ、のこのこ出てきてさ、僕は君のことが好きなんですーとかさ、いまさら言ってるところ考えてみろよ、めっちゃ間の悪いやつだよ?」



「…お前ほんと今日よくしゃべるなー」


「…そりゃそーだよ、僕の話をしているんだからな」


「…。」



しばらく間があった。






「あ」

天井を見上げたままの智己がつぶやいた。
こっちを向いて座り直す。



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