君にまっすぐ
「はぁ…」

孝俊はしばらく呆然とあかりの出て行ったドアを見ていたが、盛大なため息をつくとハンドルにうつ伏せた。

まさか、だ。
あかりのメロメロ笑顔は孝俊へのものではなかった。
孝俊がいつも乗っている車、オルディへのもの。
そして、今日の特上笑顔は今日たまたま乗ってきた車、アヴァンへ向けたもの。

今までの人生、女性に狙われ付きまとわれて困ったことは何度もあったが、面と向かって接しているのに孝俊に見向きもしなかった女は誰一人いない。

だが、さっきのあかりの態度でわかった。
あかりは一度たりとも孝俊を意識したことなど無いことを。
あかりにとって興味があるのは孝俊ではなく車であることを。

あかりが孝俊に興味が無いのであれば、それはそれでいいのではないか。
どうせ1ヶ月の付き合いしかしないのだ。
所詮、婚約者のいる身。

そうやって無理やり自分自身を納得させていることを孝俊は気がついていなかった。
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