次期社長はウブな秘書を独占したくてたまらない
わざわざ私と約束してまで話すのなら、やっぱり結婚するって話だろう。付き合ってるって話なら会社で何かのついでにさらって話せるし。

でも結婚が決まったって話ならそうはいかない。駿介のパートナーは夏希さんになるし、一族の中での私の立ち位置も変わる。もしかしたら、家族顔合わせの会食に私も呼ばれるのかな。

「何言われてもちゃんと笑っておけるように覚悟しないと」

でも、プロポーズするのかもって推測するのと、プロポーズしたって事実は予想より破壊力が違う。
今だって意思とは関係なくせり上がってくる涙を堪えるのに、必死だった。

「仕方ないよね。きっと、ずっと嘘をついてきたバチが当たったんだ」


ミナトが彼氏だと勘違いさせて、わざと軽く好意を口にして、周りにも自分にも嘘をつき続けてきた。

これは恋じゃない。家族としての、妹としての愛情だって。

だから、きっとその罰だ。こんなに苦しくっても哀しみに身悶えても、誰にも助けを求められない。伝える事はおろか、自分自身で認める事さえしなかった恋心が死んでいくのを、たった一人で見ているしか出来ない。
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